として生まれた以上、一度は呼ばれてみたい呼び方ってありますよね?

 ボスとか大佐とか師匠とか……

お兄ちゃんとか御主人様とかひろゆきさんとかいう意見はひとまず却下して、

 たとえば『監督』なんてのはどうでしょう。



 いやまぁ、周囲がその人の能力を認めてそう呼ぶ分にはいいんですが、

会社内で部下にまでそう呼ばせるってのはどうかな小島秀夫監督。

 というわけで第一回。



『メタルギア GhostBabel』



 ブレードランナー スナッチャー』『リーサルウェポン ポリスノーツ』などの作品で固定ファンを持つ小島監督。

 その人気を不動のものにし、新たなユーザー層まで引き込んでブレイクしたのがPS版の『メタルギアソリッド』。

 なんてったってベスト版も含めるとほぼ同じ内容で4回も発売されているということから、その人気ぶり(とコナミの商魂たくましさ)がわかるというものです。



 そしてこの『メタルギア』、実は大昔にMSXやファミコンで2Dのゲームとして作られたのが始まりであるということは意外と知られていません。

 ですからまぁ、新たにゲームボーイで出そうという考えは間違っているとも言えないんですが(技術的には頑張ってるし)、

ガンダムWで「デュオ×ヒイロ〜♪」とか言っている婦女子に初代ガンダムをムリヤリ全話見せ付けるような行為に思えてなりません。




トーリーはGB版オリジナル。

 実は筆者は前作までをまったくプレイしていないのでよくわかりませんが、

現役を退いた「伝説の傭兵」ソリッド・スネーク氏がアラスカ奥地(なぜ?)で引きこもり生活を送っていると、

かつての上司キャンベル大佐がいきなり仕事を持ってやってきます。


「あぁ〜? 自分はもう仕事は辞めたんすよ。そんなもん、若いのにやらせときゃいいじゃないっすか」

 とバックレようとするスネーク氏ですが、大佐は「今度の事件はお前が過去に叩き潰した組織と因縁がありそうだから」と強引に説得。

 そもそもその理屈自体が釈然としませんが、その根拠というのが「今度のゲリラは前回スネークが潜入した要塞とまったく同じ所に立てこもっている」というからますます無理があります。

 犯罪に使われた場所ならもっとちゃんと封鎖しとけよ。




もそも今回の事件の発展というのが、

前回スネークが破壊したはずの悪魔の兵器・核搭載2足歩行戦車メタルギアをアメリカが独自に回収し

研究を続けていたリメイク版メタルギアを極秘輸送機で運ぼうとしたところ、南米上空にて撃墜。

 そしてメタルギアは武装ゲリラにまんまと奪われてしまった、と。

 ……昔の因縁どうこうより、アメリカがマヌケなだけに思えるのは気のせいですか?



 だいたいこの「メタルギア」というシロモノ、ゲーム中では「悪魔の兵器」だの「世界の核戦略をくつがえす」などと徹底した自画自賛ぶりですが、とりあえず2足歩行ロボットに核兵器を積むなよ。

 モビルスーツぐらいの汎用性・機動性があるならわかりますよ。

 しかしロボットとしての理念から言えばせいぜい

「立った! クララが立った!!」

 程度の技術レベルでしかない2足歩行戦車メタルギアに核を搭載して一体どうしようというのでしょうか。



 パイロットが操作をミスってメタルギアこける
 ↓
 そのショックで核ミサイルが誤射される
 ↓
 被害を受けた相手や周辺国が報復の核攻撃に出て、世界大戦に発展
 ↓
 人類滅亡


 ……というギャグマンガみたいなオチを狙って開発したとしか思えません。



 こんな無茶な任務を、ドサクサにまぎれて無報酬で押し付けられてしまったスネーク氏の心中は察するにあまりあるものがありますが、この後も軍の無能ぶりは発揮されっぱなしです。

 ヘリで問題の要塞の上空まで連れてこられたスネーク、どうするのかと思っていたらキャンベル大佐はスネークにパラシュートを付けさせ、そのまま機外に放り出しました。

 早朝、敵要塞の真上でね。

 ……見つかるっちゅうねん! バレバレやっちゅうねん!

 しかしマヌケぶりでは敵もいい勝負、なぜかまったく気づかれず要塞に接近成功。

「夜明けのスカイダイビングをたんのうした」 と、スネーク氏は涼しい顔。

 さすが伝説の傭兵。余裕です。

 持ち物といえばタバコぐらいしか無いのにね。 丸腰かい!

 武器のひとつも持たせず敵地に潜入せよとは、ドラクエの王様よりヒドイです。




りあえず先へ進もうとすると、いきなり無線が。

 敵地でそんなもん使ったら傍受されて居所バレバレだと思うんですが、実はキャンベル大佐は回りくどい手段でスネークを殺そうとしているのかもしれません。

 無線を発してきたのはメイ・リンという女性オペレーター。

「レーダーを見れば敵の動きがわかるはずよ。いちおう、見方を説明しておくね」

 おいおい、タメ口かい。素人同然の小娘にタメ口を叩かれる伝説の傭兵。

 彼女は中国出身で現在はMITの学生、今回使用されているという無線システムを開発した天才ということで、特別にチームに加わっているとのこと。

 このメイ・リンというキャラはPSのソリッドからいるらしいけど、どこの世界に他国籍学生を重要な軍事機密が絡んだミッションに参加させるバカがいるのか。

 きっと大統領あたりと不適切な関係でもあったに違いありません。

 やるなぁクリントン。




、メイ・リン嬢に教えてもらった「敵の動き」とやらですが、基本的に敵兵は視界が前方30度ほどしかなく、

視界に入らない限りは、首筋に息を吹きかけられるほど接近してもまったく気づきません。

 スネークに殴りたおされても、銃で撃たれてもしばらくすると普通に起きあがり、見張りを再開します。

 誰に殴られた(撃たれた)のか、とかはちっとも考えようとはしません。見ているとハムスターとか小動物の動きを彷彿とさせます。

 味方もバカなら敵もバカばっかり。スパイは孤独です。

 小島監督、「リアルな感覚を得るため」と言って外国で戦車に乗って来たり、プロの元傭兵を呼んでスタッフを指導させたり、それらの費用を経費で落としたりする前に、このへんをどうにかしてください。



 バカ兵どもを適当にあしらって先へ侵入すると、また無線。

 もしキャンベル大佐からだったら

「電波が届かないところにいるか、電源が入っておりません」

 と言って切ってやろうかと思いましたが、聞こえてきたのは耳なれない女性の声。

 どうやら一足先に要塞に潜入してアッサリ全滅したバカ部隊デルタ・フォースの生き残りのようです。

「私はデルタ・フォースのクリス・ジェンナー軍曹です」

「全滅ではなかったのか」

 ……えーっと。まず相手が自分の無線の周波数を知っていることに疑問を抱いてくださいスネーク!

「ムチャなマネはするなよ。それと…
クリスと呼んでも?」

「そんなに親しくはないと思うけど?」

「これから親しくなればいい」

 しまいには、敵地のど真ん中でナンパをはじめる始末。

 本当ならツッコミたいところですが、まあいいでしょう。

 だってコナミだし。

 その後もスネーク氏は、敵に囲まれていようが何だろうがクリスやメイ・リンを口説きまくります。

「そろそろ君のことを聞かせてくれてもいいんじゃないかな」

(スパイ任務遂行中に “そろそろ” もクソもあるか!)

 ときめき度が上がるといいね、スネーク。



 もうこのへんでプレイ前に抱いていた「硬派なスパイゲーム」というイメージは吹き飛んだので、

このへんでレビューを終わりますが、次回作に期待しましょう。

「ときめきメタルギアドラマシリーズ 〜スネークの放課後〜」に。